〔日本語クラス〕罪悪感

今週も最後の授業は3年生。
ほかの2クラスでは、もう帰国の話はしてしまったし、今日はこのクラスでも話さなきゃ・・・という重圧。
まず、DVDの続きを見るべく、学生が用意しておいてくれたテレビにDVDプレーヤーを接続。でも、映像は見れるのに、なぜか音が出ない・・・。音量を上げても、プラグを確かめてもダメ。このテレビ、昨日の授業で6時までは使えてたのに。何があったのか・・・。私もテンパる。もう授業と言える授業は来週しかないし、このDVDをちゃんと見てもらえないと、今学期の成績の半分の割合を占める課題ができなくなる!なんか焦りからか、教室まで歩いた後の体のほてりが、いつも以上に収まらず、汗もなかなか引かないし、右手でうちわは扇ぎっぱなし。「どうしようかなぁ」と、ほんとに困っていると、学生が事務室に行って話をしてきてくれたらしく、今までその存在すら知らなかった2台目のテレビを借りてきてくれた。このテレビでは何とかDVDが再生できたので、いざ授業開始。
DVDを見せている間、私は黒板に今日の課題、今後の課題、試験のことなどを板書。そうこうしているうちに、後半1時間のDVDも見終わり、今日の課題と板書した内容の説明へ。このクラスも、火曜のクラス同様、課題とか試験についての話に不満を唱える学生は1人もいなかった。昨日のクラスでだけ起こった不満。やっぱり、あのクラスは学生達の質がこの1年で変わってしまったのかもしれない、と改めて考えさせられる。
そして、授業終了10分前、だいたいの学生たちが今日の課題ができてきた頃、いったんは鎮まっていたあの重圧と憂鬱さが、またよみがえってくる。そろそろ言わなきゃなぁ・・・。
「もう耳にしている人も多いかもしれませんが・・・」と、意を決して話し始める。来週が私が本当の授業ができる、最後の週であること、その後も試験などで一応会うことはできるということ・・・。学生達の「えっ」という声と、急に静まり返る教室。みんなが一心に私のほうを見ている・・・。なんか、これだけで胸が締め付けられる。
でも、もっと胸の痛みを感じる理由は、ほかにある。3週間前、このクラスのJさんが、授業の後に私のところに来て、「先生、4年生になったときのことなんですけど、私たちにも面接の練習とか就職についてのことをしてくれませんか」とお願いに来たのだ。先学期の4年生の授業で私がやっていた内容を、どうやら4年生から聞いたらしい。
でも、来年、私はもうこの学校にはいないんだよな・・・。もう教えてあげられないんだよな・・・。
「実は、来学期、私は、もうここにはいないんです・・・」
ほんとのことを言おうか、一瞬迷った。だけど、この学生1人だけに先にこの話をするのもよくないと思い、結局、「わかりました」としか言えなかった。もう教えることができないのに、希望通りの授業を私がしてあげることはできないのに・・・。この学生は来学期、私がここに残ることを信じて疑わず、そして何より、私のことを信頼してそう言ってきてくれたんじゃないかなと思う。でも、そんなJさんに対して、私は「わかりました」って・・・。信頼してくれていたであろう学生に対して嘘をついて、欺いて、不誠実な態度をとった私。
その直後から自分への嫌悪感に苛まれ、この3週間ずっと、彼にすごい申し訳なくて、折に触れてこのことを思い出した。
そして今日も、この話をするとき、申し訳なさでいっぱいだった。「Jさん、この前、せっかく言ってきてくれたのに、ごめんなさい」、この一言を言う時、また涙があふれそうになって、こらえるのに必死だった。
「来学期、私が教えられない分、後任の先生には、責任持って、みんなの要望を伝えておきます」
そう言って、この2年間の私の授業で、もっとやってほしかったこと、改善してほしいことなども含め、要望を書いてきてもらえるようお願いして、今日の授業は終了した。
結局今日もまた泣いてしまうところだった。帰国のことを伝えなければならないのはあと1クラス、火曜日の1年生のみ。これで解放される、という気持ちもあるけど、やっぱり気持ちは落ち着かない。最後のクラスでも、ちゃんと話せますように・・・。