「先生、ちょっと待ってください」
2年生の授業。教室に入ろうとする私を、班長と2人の学生が呼び止めた。廊下から見たところ、教室の中に学生はいるよう。会議でもしてるのかなと思い、「え、なんですか」と聞くと、学生の1人が「先生、明日は中秋節です。いつもお世話になっています。どうもありがとうございます」と話し始めた。
確かに、明日は中国では最も大切な日の1つである中秋節。中国に来て2年目になると、一通り行事についてはなんとなくわかっているので、「そうですねー」とあいづち。すると、学生が、おもむろに「これ、どうぞ」と紙袋を差し出してきた。「月餅です。これはクラスのみんなからです」とのこと。去年は大学から月餅をもらうことはあったけど、学生からもらうことはなかったし、まさか学生たちがこんなことをしてくれるとは思ってもなかったから、すごくうれしかった。うれしくて、「いいの?」「ほんとにいいんですか?」と何度も繰り返してしまう私。もちろん、うれしいのは月餅じゃなく、学生たちのその気持ち。こんな私に・・・いいのかな。その後、教室に入って学生みんなにありがとうを言って、日本のお月見について少し解説。
帰宅後、紙袋から月餅の箱を取り出すと、まだ中にピンクの何か。開けてみると、学生からのメッセージ。

ayumickey先生;
あしたは中国の中秋節です。中秋節は家族そろう家に集まっていっしょに月餅を食べながら月見をする祝日なんです。
クラスメートたちが大変お世話になってどうもありがとうございました。
これからもよろしくご指導くださいますよう、お願い申し上げます。
ずっと幸せな気がしているのをお祈りいたします。
                       九月二十日
                       日本語科 062組

少しおかしいところもあるけど、言いたいことは伝わってくるし、全然問題ナシ。1年前のちょうどこの時期、この子たちは全然日本語がわからないゼロ初級だった。それを思うと、今こんなふうにお互いが日本語でコミュニケーションがとれるのって、やっぱり学生たちのがんばりの賜物だと思うし、教師としては何よりもそれがうれしいところ。
さぁ、水曜からは今年度の新入生の授業が開始。1年後には彼らも今の06の学生たちのように日本語ができるようになってるはず。今はまだほんとにゼロだけど、その過程を見ていくのも日本語教師の醍醐味。というわけで、今年の1年生の授業もかなり楽しみです。